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月光夢想-5.5-死んだら意味がねェ



※連載SSの第二部5話目、秘書視点。



血や怪我の表現があります。お気を付け下さい。
















































そんときゃ、春にしちゃあ暑かった。
久々に晴れたからか、人も多かったしあの喫茶店も混んでた。
でも、最近、ほら。
喫煙者って少なくなってるだろ?
だから運良く喫煙席はガラガラだったんだ。


うちの社長は言いだすと聞かねぇから。


取り敢えずカウンターに並んで待ってる間、
あいつが電話してるのが見えてたし、
そのせいかすっかり油断してたんだろうな。


暫くして順番が来て、
もう二年も一緒に居るから何頼むのかも解ってるし、
白薇は好きなモン頼めば良いなって事で、
外を見んの辞めてメニューに目を落とした。
見てたからって何も出来ねェのは解ってる。
けど……後悔してねェっつったら嘘になる。
















……………本当に、その直後だったんだ。











言葉に表現出来ねェくらいの爆発音。



すぐに解ったよ、車の衝突事故だって。



昔は何度も聞いた音だったし、
特有のエンジンやら塗料やらが焼け焦げる臭いが一瞬で、
店内まで広がってきたからな。



店内の客も騒ぎ始める頃に、
ようやく俺の脚が外へと向かった。



店の前でざわざわ騒ぎ立てる奴等を押しのけて、

その間も、ずっとその予想は外れててくれと願ってた。
肩の上で小さく震える白薇を抑えながら、人波の間に見えたのは、
真っ白いオープンカーの後ろにデケェトラックがのめり込み、炎を立てている絵。




「…ユウ、キ…?」


唖然と見つめるしか出来ねェ俺の肩の上からか細い声。

そこでやっとだ。
やっと覚醒する。


見てる場合じゃない。


ちらりと横を見。
それとなくわかりやすそうな服装をした女俺の真横に居た女の肩を掴む。
一瞬強張ったその女の顔も、俺を見るなり一気に豹変した。
(うん、こーゆー時顔が良いって得だ。)



「アンタ、コイツ連れてあの喫茶店に行っててくれ!」
「えっ!?」





指差した先は…さっきまで並んでいた、喫茶店。
精密機械であるコイツをあの中に連れていく訳にゃいかない。
ここまでそれなりの熱気が増してきてる。
ここに居られるよりゃあ安心だ。
白薇を俺の肩からその女の手に乗せ。
爆発で混乱していて信号なんか知ったこっちゃねぇ道路へ、
しいてはあの炎目掛けて走る俺の耳へ、
白薇が俺の名前と、ユウキの名前を呼ぶ声がやけに響いた。






酷ェ有様だった。
近くは風俗街…って言っても、
ここは都心のど真ん中。
普通に店も多い。
だから人も多い。
路中だって、ここでは規制されていないのを良い事にみんなやってる。
もちろん、普通に走行してる車だってある。
巻き込まれて横転している車だって。






たった4車線。
そんだけの距離の向こう側にあいつはいる。
なのにそこまでが、異常に遠く感じた。
…ここはいつから車の廃棄場になったんだよ。




燃え上がる車(俺のじゃない、後ろのトラックだ)に近寄ると、
そうとしか思えない。
そんなに大きい爆発だったのか?
俺の周りに停車していた車は、横転したり、燃えていたり。




そして俺の車は…
前輪が両方とも大きく上がり、助手席は…目の前のファミレスにブっ込んでた。
後ろには、トラックがのめり込んで。
トラックは炎に包まれて。




轟々と唸るトラックと、前が霞むほどの煙の中、
俺の目がそれを捉えたのは、その次だった。
運転席の下と、道路に丁度…押し潰されるように、
うつ伏せに倒れこんでいる金髪。




「ユウキ!!!!」




うつ伏せに倒れているその背には、
深く突き刺さる鉄片。
トラックに脚は挟まっていて、もうぐちゃぐちゃだろう、きっと…!






とりあえず、力任せに背に刺さる鉄片を抜き取った。
次に、ユウキに重く圧し掛かる車へと、熱さも関係なく手を伸ばす。






…そこで、初めて視界に入ったユウキの両手。
…抜けだそうとしたのか…血塗れで、爪ももう形の解らない…白い手。





「…ツバサ…?」





下から、訊きなれた声。
その声で…目の前の血塗れの手に気を取られ
力が殆ど入っていなかった腕に力が籠った。





「…っ起きたか!?
悪ィな、今車どけっからよ…!!」

虚ろな、もう殆ど見えないだろう目を向けたユウキにそう声掛けた。
どけられる自信なんてねぇ。
けどどかす自信はあった。




腕にさらに力を込めた、そん時。
俺の右脚が、弱い力で力強く握られて。













「僕より…あの子…!」






多分、今出せる最大の声で、ユウキは叫んだ。
真っ赤に擦り剥けて爪も無い様なその指が差した先には、
黒くて小さい…神姫。
一度ユウキを見ると、自分だって痛いですまねェ目に遭ってるっつーのに、ゆっくりと頷いた。
そうか、この手は。
自分が抜け出すためにもがいたんじゃねェ。
あいつを助ける為か。


熱過ぎて感覚もねェ両手を車から引き剥がして、黒へと向かう。
その黒い彼女を抱き上げて。
ジャケットの胸ポケットにしまい込む。
今度こそ、あいつだ。
そう思うが、その想いは紛れも無く奴本人に掻き消された。


「助手席の…っ包み!」
「あぁ!?」



何言ってるんだコイツは!
助手席ってさっき買ったもんしかないだろ。
そんなもん…少し変わり者の店だから行き辛いし、頼み辛いかもしれねェけど。
自分の命の危機を放っておいてまで守る様なもんなのか!?
中身が何か何て知らねェ俺は、
そのままのセリフを吐いた。


「さっき買ったやつか!?
また買えばいいだろ!!!?」


ユウキは聞く耳は持たないように、大きく頭を振って。
またその霞みそうな声で。








「…神姫!!」

「っ!!!」






…無駄に通る声が、喉に詰まった。
その声を無視して、ユウキを引き摺り出して逃げる事だって出来た。
でも…それじゃ、ダメだ。

そんな事をしてまで生かしても。
神姫を中心に脳みそが働いているコイツには…
そんなのは許される事じゃない。
自らででも命を絶ちかねない。
こいつは…そうゆう男だ。
自分なんかより、神姫。
それが守れない位なら―――





















そんな事解りきってる。
だから―――断れる、訳もねェ。
大きく息を吐いて、俺は運転席の正反対――
激しくファミレスにのめり込む助手席側へと向かった。


















向かってみると良く分かる、
そのファミレスの中の混乱と、車体の状況。
窓ガラスをブチ破って助手席の前方は完全にファミレスに入り込んでやがる。
綺麗に車の形に空洞が開いたガラスはそのまま中とこっちを分断したままだ。めんどくせぇ。
助手席を覗き込むには店ン中に入らないと無理だが…入口まで回り込んでる時間なんてねェ。

思い切り脚を引いて…

振り切った。







バァン…と音を立てて、ガラスは砕け散った。









隔絶された中は、車が押し入って来た席には運よく人は居なかった様だが。
…当然と言えば当然。
車の衝突時にガラスが砕けて飛び散ったんだろう。
ところどころ、怪我をしている人間が居る。
でもそんなもん。
悪ィがそんときの俺には目に入ってたけど何も感じねェモンだった。
急ぎ助手席を覗き込むが…












何も、無い。
そしてそこでやっと気付く。
そういやそうだよ、爆発でここまで乗り上げてンだから、
まだ助手席にあるなんて限らねェだろーが。




大体45度くらいの角度でファミレスにのめり込む車体の、助手席側から今度は外へ。
外へ出たところで…
僅かに見覚えのある、包み紙に気付く。
拾い上げると、それは紛れも無い…アイツが『神姫』だと、そう言ったあの、包み。






―――中身は、無い。

しかし紙袋も燃えていない、乱暴に剥がされて、ガラス片が散ってはいるが、
後はキレイなモンだ。



「…どーゆーことだよ、オイ…」


自分で逃げ出してったか?

…いや、あんな箱に収まってたって事ぁ、起動はしてないだろう。
…盗まれたか?この混乱で…



その考察は、トラックからの一段と大きな爆発で燃やされる。
















考えてる暇はねェ。
あいつが死んだら意味がねェんだ。

振り切るように運転席の方へと向かった。


すでにユウキは気を失っていて(そりゃあそうだ。だいぶ血を流してる)、
車体は今にも崩れそうで。
ジャケットの袖を破り、両手にガッチリまきつける。
半ば無理矢理、熱くなった鉄の塊を自身の背に。
手は下を支え。だけど焼けねェ様に。



そうしたのは、これからの事を思ってだ。
多分コイツはもう歩く事が出来なくなる。
そうなったら、今より更に手助けが必要になる。
…俺の手まで潰す訳にはいかない。

その思いでの判断で背を使ったのだが、思うよりそちらの方が力が入ったらしい。
僅かに持ち上がった車体。
…後、少し。










その俺の横へ。

しっかりと車体を持ち上げようとする細いがしっかりした腕が伸びる。



さらりと流れる薄いオレンジ。


―――さっき、店で見た…店主。

「もう少し持ち上げよう。
そしたら俺が引き摺り出すから」
「…っ!!!」





ぐ、と細い腕に力が込められ…何度か、それを繰り返す。
人間、火事場の馬鹿力ってあるもんだな。
さっきよりもさらに持ちあがる車体。
その隙を見て、そいつがユウキを…引き摺り出した。








それを合図にするかの様に俺が車体を支えていた力は一切抜け切って。
車体はがくんと崩れ落ちた。











ジャケットも下のYシャツ諸共熱にやられ、曝け出された背に鈍い痛みが走る。
意識を保ちユウキの体を引き摺り出したそいつの右手も…
皮は焼け果てて赤い肉が覗いている。



轟々と唸る炎の隙間から聞こえる救急のサイレン音。



俺は、ユウキを右腕で肩に抱え、
ソイツを左手で抱え。



その音へと走った。





















医者にユウキとソイツを預け、搬送を見届けた後。
俺を救急車に乗せようとする輩を一度待たせて白薇を迎えに行った。
白薇は、預けた女の手に抱かれたままぐしゃぐしゃの泣き顔で。
俺の顔を見るなり飛びついて更に泣きじゃくった。


白薇を宥めながら搬送される途中。
白薇はずっと謝っていた。
店に行く前に嫌な気配を感じたのだと言う。
それを口にしないで、止めなかった自分が悪いと。
その白薇に俺は、
「あれは事故だ。」
と髪を撫で続けた。
強気で強情な女だと思っていた姿はそこに無く、
か弱い、唯の少女だった。







搬送された病院で背の治療を受ける俺だけが聞いたのは、

二度と歩けないユウキ。
足首から下の損傷が酷く、切断が必要な事。
神経も修復不可能であるが、それ以前の問題だった。
二度と歩く事は出来ないだろうとの事。
あの店主の右腕には僅かなひきつりが残るとの事。
俺の背には火傷の跡が残るだろうとの事。

そして。

――――あの事故は、
故意に起こされた可能性が高いとの事―――

その疑念は…当事者として聴取を受けたユウキはともかく。
他の誰にも語る事は無かった。





next...?

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