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月光夢想-5-絶対、助けるから



※連載SSの第二部5話目になります。



血や怪我の表現が出てきます。お気を付け下さい。


真面目な時間が持たない奴のせいでめちゃくちゃだよ!




続き、白魔型考案者の東雲様のお宅より数名お借りしています。










































どこかに行きかけた意識が、
激痛と灼熱によって引きもどされる。
熱過ぎて開けていられない目を無理矢理開くと、
熱くなっているコンクリートの道路。
腰に走るただ事ではない激痛と、感覚の無い両足。

自分に伸しかかる白い車体の後方にがっしりとめり込んでいる大型トラック。
そこから…自分から、96.5センチしかない場所で、
轟々と燃え上がる火柱。

近くに無残に転がる、真っ白かったオープンカーのハンドル。
そんな状況下であるのに何故か脳内は酷く冷静で、


「あぁ、こりゃもう脚駄目だな。」

なんて思っていた。

しかし、ふと思えばさっきまで手に抱えていた黒い子が居ない。




一気に脳内は混乱して、あたりを頻りに見渡す。
数回見渡した後、99.2センチ先。
それほどの距離に、彼女の小さな体が横たわっているのが解った。




先程俯いて倒れていた彼女の頬には乾ききった涙の跡。
近寄ろうと思っても、大きな車体と腰の激痛がそれを拒む。

腰には―――爆発の凄さを物語る様に激しく変形した、
おそらく、あのトラックの…ドアの破片。
その角が、深々と突き刺さっている。
おそらく―――神経か骨まで達して居るんだろう。
そのせいで、脚の感覚が全くと言っていいほど無いのだ。
もう長い事麻痺しきっているのかもしれない。
力の無い自分では車体を腕だけで上げるのも不可能だ―――

彼女だけでも助けたかった、けど。




「…そこまで、行けないや…」




いっそ、死ぬ事すら覚悟したその瞬間。
その声は、しっかり届いた。


























「…助けて…?」












聞き慣れないか細い声。
聴きとる事すら困難で、
でも確かに。

99.2センチ先の彼女の唇から零れる声。

素体も顔も、ボロボロになって涙も乾いて。
意識も無いであろう彼女の、
助けを求める声。























自然と、言葉を返していた。












「絶対、助けるから…」





























そこから先はただ必死だった。
どうにもならないのに必死に動こうとした。
何時間にも、何十時間にも感じた。
本当は何分も経っていない。
ずっと、彼女に声をかけていた。
「助けに行くから、待ってて」
そう言い続けないと、
自分がこの気の狂いそうな痛みに負けてしまいそうで。
何度も何度も、何十回も何十回も、
抜けだそうと、それだけ。

指の先に感覚が無い。
指までおかしくなったらしい。
おかしいのは僕の頭なんだろうか。
それでも構わない。
彼女が助けられるなら。

伸しかかる車体はびくともせず、
大分熱を持っているのだろう。
肉を炙る様な気味の悪い臭いが纏わりつく。



それでも、彼女の元へ行こうと。
足掻いてもがいて。
大量の血が出ていって、
もう気持ちが悪くなるくらい血が引いて、
意識と視界が遠のいた頃。











「…っ」






耳の奥で声が聞こえた。
それは聞きなれた低音。
直後、腰に再度耐えきれない位の激痛。
激しい痛みを代償に重みはふっと消えて。
少し離れた場所に、ガラン という金属が投げ捨てられた音。







薄く眼を開くと、自分の上に黒く大きい影。
使い物にならなくなってきている眼球を向けると、
そこらじゅう黒く煤汚れて、
服だって焦げ付いた、秘書が自分に伸しかかる車体を支えようとする姿。






「…ツバサ…?」
「…っ起きたか!?
悪ィな、今車どけっからよ…!!」




真上で、もう大分熱くなっているであろう、
鉄の車体に手を掛けている彼の姿。





その彼の脚を、強く掴んで。
出来うる限りの声で、僕は願った。







「僕より…あの子…!」





必死に、見えてしまうだろう。
でも僕自身はそうでもなかった。
自分より先に、助けを求めているあの子を、助けて欲しかった。
血の気も引いて、気持ち悪い程白い指先だけが、
真っ赤に擦り剥けて爪ももう形も解らない。
動く事が不思議なその指で、
彼女を指差す。




彼の目がそちらに向いて、次に僕に向いて。
僕が霞んだ目で頷くと、
彼は、鉄から手を離し、99.2センチ先の彼女を抱き上げて。
ジャケットの胸ポケットに優しく収めた。


それを見届けた後、僕はまた言葉を発する。



「助手席の…っ包み!」
「あぁ!?さっき買ったやつか!?
また買えばいいだろ!!!?」



彼が焦っているのは解る。
でも、ダメなんだ。







「…神姫!!」







彼が大きく息をのむのが解った。
あの中に居るのは神姫なのだと、
単語だけだが伝わった様だ。
今、意識は無くたって、彼女だって生きてる。
これから生きなきゃいけない子を捨ててまで、
僕は生きたくない。



そんな想いを…汲み取ってくれたのかは解らないが。
息を付いて彼は僕の正反対――僕を物凄い力で押し潰しているだろう運転席の…
逆側へと向かった。



良かった。
これで、まだ名の無いあの子も、名を知らないあの子も、
二人とも―――助ける事が出来る。




その安堵感でいっぱいだった。
自分がどうなるとか、そんなのどうでもよかった。
あの子達を救えるなら…命なんて、安いものだ。

地面には一面どす黒い血でいっぱいだ。
これほどの血を流してもまだ意識を保てている自分がおかしくて仕方が無い―――
でも、そのおかげで…彼に、彼女達を助ける様、伝える事が出来た。

…そこで、意識は途切れた。



































































「目が覚めたのは3日後。個室のベットの上だった。
傍にはツバサと、白薇と…眠ったままの黒いその子…李狐が居てくれた。
でも…ガラスケースのその子は居なかった。」


目を伏せ。
悲しく呟く。

「李狐は記憶が無かった。その時の事どころか、どうしてそこに居たのか。
人間でいう一般的な記憶喪失は自らの深層意識が忘れさせてしまうものだけど…
李狐の場合は、記憶回路の故障。以前の記憶が完全にdeleteされている。
思い出す事は無い。
でも僕はそれでも良いと思った。
恐ろしい思いをしたんだろう。だから思い出す事は無い。」


一度は伏せた目を薄く開き、李狐に向ける笑顔は哀しかった。


「あの子は…ガラスケースのあの子は、助けられなかったんだって、そう思った。
身が千切れる想いだった。
李狐を助けられた事は舞いあがるほど嬉しかった。
だけど彼女を助けられないで生きている価値なんて無い。そう思った。
でも、ツバサが言ったんだ。
『助けられなかったのは俺の責任だ。
それに、もうあそこに神姫は居なかった。
誰だか知らないけど連れて行って元気でやってるんだろうから安心しろ』」


そう言うユウキの言葉の後、皆がちらりとツバサを見る。
…彼はいつの間にか閉じていた瞳をゆっくり開いて、
真剣な顔つきで。
ゆっくりと、しかしはっきりと。
言葉を紡いだ。




「惚れるだろ?」



…当然、この後アキラ・ルビー・李狐に袋叩きにあったのは言うまでも無く。
松本とユキヤの、「それを言わなければ良いのに」という台詞は彼に届く事は無かった。





next...


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comment

Secre

これは非常に……。

彼らしい、本当にあっち側に行き着いたものでなければ分からぬ境地が。
……ツバサさんも大変ですな。色々な意味で。
まぁ、でもこんな惨状であれば、白薇さんのトラウマになってもいたしかたない。

ふと、最低でも物語は2041年以降なので、何らかの手段で歩行する方法があるのでは……とか思ったけど。
無粋ですねそうですね。

そして、最後のツバサさんに得も言われぬ安心感を感じるのはなんでだろうw

No title

東雲さまー。
辿り着いた境地…といいますか、彼にとっては神姫の居ない世の中は麺の無いラーメンみたいなもので。
神姫の為に生きたいと願う彼に神姫を救えない事は苦痛で、
その為なら命を捨てても惜しくないと考えていると言いますか。
まぁある意味辿り着いてしまってはいるんですけどね。

歩行する方法はあるかもしれません。
ですが、現状の私には思いつきませんでしたし、
それに何より、彼が望みません。
もし治す方法があっても、それに費やす時間を考えたら、仕事に復帰したい、
神姫の為に働きたいと考えるんじゃないかな、と。
まぁ私に方法が思いつかなかったっていうのが一番の理由ではありますが。

ツバサは癒し系弄られキャラです。←え
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(。←あっても無くても良いか)

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最近はiPhoneで拡散性ミリオンアーサーというゲームをやっています。
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